今日は芯の説明をします。上着の前見頃の中には必ず芯が据えられています。
ミラノでは、Canape(カナペ)と呼ばれ、前見頃の土台となる芯です。イタリア語で麻という意味ですが、最近では麻100%の芯地はコート用にしか使われません。ジャケットにはキャメル、麻、毛、ビスコース繊維などの混合素材の芯地が主に使われています。もう一つ、Crine(クリーネ)と呼ばれているバス芯。馬の鬣と尻尾を組み合わせて作られた少し強度とハリがある芯で胸増芯として使われています。
それぞれのサルトリアによって使う芯地は違っていますが、最も大事なのは必ず、どの芯地も一晩以上、水に漬け収縮させる作業は、どのサルトリアでもかわりません。
イタリアではお客様の体型、胸のボリューム感、肥満体など、いろいろな事を考慮し一着、一着、芯地をカットし、ダーツをとって芯作りをします。
カットしたダーツ部分を張り合わせるようにして、ミシンで縫っていきます。
バス芯と土台となる芯とを一つにしていきます。胸のボリュームを形成する大切な作業です。
左手で芯を丸めながら、ハ刺していきます。
ハ刺しが終了したら、胸のボリューム感を確認します。この芯はまだこの時点で、一切アイロン掛けされていません。 アイロンワークに頼らず、芯が一人で形を維持することが大切です。この芯はこれからたくさんの工程を経て服になり、お客様が袖を通した時に体にフィットしなければなりません。
服作りの第一歩、芯据えです。服作りにおいてすごく重要な作業の一つです。 ミラノのサルト 井上 勇樹